2025年5月20日

こんにちは。 大田区のうみのいろ歯科矢口渡です。
「歯医者は痛くなったときに行くところ」と思っていませんか?
日本歯科医師会が2022年に実施した「歯科医療に関する生活者意識調査」では、83.2%の方が「もっと早くから歯の検診や治療をしておけばよかった」と回答しています。後悔の理由は思っていたよりも悪化していたためです。
実は、最近の歯科医院では“予防”のために通う方がとても増えてきています。先ほどの「歯科医療に関する生活者意識調査(2022)」でも45%の方が定期チェックを受けていると回答しています。
■予防歯科大国スウェーデンの取り組み

スウェーデンでは1970年代から政府主導で「国民全員が定期的にメンテナンスを受ける」ことを義務化しました。スウェーデンの予防歯科推進策は
①メンテナンスの義務化
②乳幼児期からの予防
③オーラルフィジシャンの活用です。
「オーラルフィジシャン(お口の内科医)」は、日本ではまだ聞きなじみが無いと思います。お口の「内科医」なので、削るなどの治療は行いません。患者さんの生活習慣についてヒアリングして、歯周病やむし歯の悪化原因が無いかを診断する歯科医師なのです。特別なことをするのではなく、定期的にチェックをし、リスクとなる要素があれば指導をする。これだけでスウェーデンは世界をリードする予防歯科の先進国となったのです。このことは、定期的なチェックの重要性を表す事例として大変有名です。
■定期チェックとは?

当院では、定期メンテナンスに通ってくださる方に対し、オーラルフィジシャンの視点でリスクとなる要素をお伝えしています。
抜歯の3大原因は、歯周病、むし歯、そして歯の破折です。将来「抜歯」にならないように、この3要素について定期チェックを行い、リスク診断をします。患者さんごとにリスクや程度は異なります。個々に合わせた丁寧な管理と指導を行うことで、むし歯や歯周病を未然に防ぐだけでなく、将来的な医療費や治療の負担も減らすことができるのです。
■保険でできる主なメンテナンス内容

① スケーリング(歯石除去)
スケーリングとは、歯にこびりついた歯石やプラーク(歯垢)を専用の器具で取り除く処置です。歯石は一度付着すると歯ブラシでは落とせないため、定期的に歯科医院で除去する必要がありま す。 歯石がたまると歯ぐきに炎症が起こり、やがて歯周病が進行します。
定期的なスケーリングで細菌の増殖や悪性化を防ぐことは、歯周病進行予防につながります。
② 歯周病検査と歯ぐきのケア
スケーリングを行う前後には、歯周ポケット(歯と歯ぐきの隙間)の深さを測る検査を行います。この検査で歯周病の進行度を確認し、必要に応じて歯ぐきの中の汚れを取る「ルートプレーニング」 や歯科衛生士による歯周ケアが行われます。 保険の範囲内でも、軽度〜中程度の歯周病であれば、定期的なケアによって進行を食い止めることができます。
③ ブラッシング指導(TBI)
「毎日ちゃんと磨いているのに、むし歯や歯周病になる…」という方は、磨き残しの癖があるかもしれません。歯科医院では、歯科衛生士が患者さん一人ひとりのお口の状態に合った歯磨き方法 を丁寧にアドバイスします。保険診療内で提供されるため、自己流の磨き方を見直す良い機会に なるでしょう。磨きにくい箇所の対策や、デンタルフロス・歯間ブラシの使い方も教えてもらえます。
④ PMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)
PMTCとは、歯科衛生士が専用の機械とペーストを使って行うプロによる歯のクリーニングです。 プラークやバイオフィルム(細菌の膜)を徹底的に取り除き、歯の表面をツルツルに磨き上げます。通常、PMTCは自費診療になることが多いのですが、歯周病の予防や管理の一環として行われるPMTCの一部は、保険内で行えるケースもあります。
「保険内でどこまでできるか」を歯科医院で相談してみましょう。
■まずは保険のメンテナンスから

もちろん、保険適用外のメンテナンスもあります。たとえば、エアフロー(微細なパウダーと水で汚れを除去する処置)、審美目的のクリーニングなどは基本的に自費診療です。自費 メンテナンスでは、保険に比べてより丁寧なケアや、見た目の美しさを重視した処置が可能になり ます。 とはいえ、いきなり自費に切り替える必要はありません。まずは保険診療で定期的にメンテナンス を受け、お口の状態が安定してきたら、必要に応じて自費のケアを取り入れていくのもよいでしょう。
■どれくらいの頻度で通うのがベスト?

お口の中の状態にもよりますが、一般的には3か月に1回のペースでのメンテナンスが推奨されています。特に歯周病のリスクが高い方、過去に大きな治療を受けたことがある方、糖尿病な どの全身疾患がある方は、より短い間隔でメンテナンスが必要になることもあります。定期的に通う=定期チェックを受ける ことで小さな異常にも早く気づくことができ、結果として「痛くない、怖くない歯医者通い」が実現で きるのです。
■まとめ

歯は、一度削ったり抜いたりしてしまうと、元には戻りません。しかし、定期的なチェックやメンテナンスによって健康な歯を長く保つことができます。そして、それは全身の健康にもつながっていきます。「予防 歯科」と聞くとハードルが高そうに思えるかもしれませんが、保険でできる範囲から始めてみることが大切です。 歯科医院では、患者さま一人ひとりの状態に応じて、無理のない範囲でメンテナンスを提案してい ますので、まずはお気軽にご相談ください。