2025年9月22日

こんにちは。
大田区のうみのいろ歯科矢口渡です。
「更年期」というと、ホルモンバランスの変化や体調の揺らぎをイメージされる方が多いと思います。しかし実は、更年期はお口の健康にとっても大きな分岐点です。「歳だから仕方ない」と放置すると、気づかないうちに歯周病や骨の吸収が進み、最悪の場合は歯を失うことにもつながります。今回は、更年期に気をつけるべき口臭や歯のトラブル、その原因と対策についてご紹介します。
■唾液量の減少による口臭・虫歯のリスク

加齢とともに多くの方にみられるのが、唾液の分泌量の低下です。唾液には口の中を潤すだけでなく、細菌を洗い流す「自浄作用」や細菌の繁殖を抑える「殺菌作用」があります。そのため、唾液が減少すると口の中が乾燥しやすくなり、
● むし歯になりやすい
● 歯ぐきが炎症を起こしやすい
● 口臭が強くなる
● 食べ物が飲み込みにくくなる
といったトラブルが一気に増えてしまいます。特に口臭は細菌の繁殖によって発生するため、乾燥しているほど強くなる傾向があります。「最近口が乾く」「口臭が気になる」と感じたら、ドライマウス(口腔乾燥症)の可能性も考えられます。
■更年期に進行しやすい歯周病

更年期は歯周病にも注意が必要です。歯周病は歯ぐきや歯を支える骨(歯槽骨)が炎症で壊されていく病気ですが、加齢により免疫力が落ちたり、唾液が減ったりすることで進行が早まります。歯周病は「サイレントディジーズ(沈黙の病気)」とも呼ばれ、初期は痛みもなく静かに進行していきます。気づいたときにはすでに歯がぐらついていたり、最悪の場合は抜歯を余儀なくされることもあります。
■エストロゲン減少と歯槽骨の吸収

更年期を迎えると、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンが大きく減少します。エストロゲンには骨の吸収を抑える働きがあり、全身の骨粗しょう症だけでなく、歯を支えている歯槽骨の吸収にも影響を与えます。その結果、歯周病による歯槽骨の溶解が急速に進みやすくなり、同年代の男性に比べても女性の方が歯を失うリスクが高いといわれています。
つまり、更年期は「口臭が出やすくなる」「歯周病が進みやすくなる」「歯槽骨が弱くなる」という複数のリスクが重なる時期なのです。
■更年期の口腔トラブルを防ぐための対策

加齢やホルモン変化そのものを止めることはできません。ですが、日常生活でのケアや定期的なメンテナンスで、口臭や歯の喪失リスクを大きく減らすことは可能です。
・毎日の口腔ケアを徹底する
歯磨きはもちろん、デンタルフロスや歯間ブラシを併用してプラーク(歯垢)をしっかり取り除きましょう。口臭が気になる方は舌の清掃も効果的です。
・唾液分泌を促す習慣を持つ
水分補給をこまめに行い、よく噛んで食事をすることで唾液分泌を促します。ガムを噛むのも有効です。
・バランスの取れた食生活
カルシウムやビタミンD、タンパク質は骨や歯ぐきを守る栄養素です。偏った食事は骨や歯周組織を弱めてしまうため、バランスを意識しましょう。
・定期的な歯科検診とプロのケア
セルフケアだけでは限界があります。歯科医院で定期的に歯ぐきの状態や歯槽骨の吸収をチェックし、歯石除去やクリーニングを受けることが大切です。特に更年期以降は、3か月ごとの定期検診がおすすめです。
■まとめ

更年期は、唾液分泌の減少やエストロゲンの低下によって、口臭やむし歯、歯周病、さらには歯槽骨の吸収といったさまざまなリスクが高まる時期です。残念ながら加齢という原因をなくすことはできません。しかし、正しいケアと定期的なメンテナンスを続けることで、その影響を最小限に抑えることは十分可能です。「最近口が乾きやすい」「歯ぐきの腫れが気になる」「口臭が強くなった気がする」――そんなサインを感じたら、早めの受診がおすすめです。当院では更年期のお口のトラブルに関する検査や、適切なケア・メンテナンスを行っています。ご不安のある方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。